安倍内閣が進める「アベノミクス」の柱でもある訪日外国人観光客の誘致。2020年度までに4000万人達成が目標です。これを受けて、富山県が立ち上げたのが「立山黒部国際ブランド化推進会議」。28項目の事業の推進が検討・具体化されています。
そのなかで、特に山岳関係者や自然保護団体から批判があがっているのが、ロープーウェイの建設、立山黒部アルペンルートの早期開業、通年営業、営業時間の拡大、グレードの高いホテル・宿泊施設の建設などの項目です。昨年8月には山岳遭難救助などで大きな役割を果たしている阿曽原温泉小屋の佐々木泉代表が、厳しい内容の「意見書」を発表。9月には室堂付近の山小屋代表6氏が連名で、また今年3月にはNPO立山自然保護ネットワークが、それぞれ厳しい内容の「意見書」を提出しています。
石井知事や「推進会議」に参加する観光業者・関係者は、スイス・ツェルマットのような国際的山岳観光地に立山をしたいと言っています。しかし、立山黒部は、一年のうち半年以上を10メートル近い雪で覆われる高山地帯です。自然は厳しく、高山植物も極めて脆弱であって、ヨーロッパ・アルプスとはまったく違うと関係者は、怒っています。ヨーロッパ・アルプスでは、早くから遊牧民族など人の生活が営まれ集落ができたのに比べて、立山黒部は厳しい自然のなか、ごく最近まで人が入り込めない場所であって、信仰の対象として恐れられ敬われてきました。だからこそ、今もライチョウが生息する自然環境が守られてきたのです。
立山黒部アルペンルートが開設されてからも、県民運動が広がってマイカーの乗り入れを禁止するなど、様々な配慮がなされてきました。安倍内閣のもとで、観光振興のために公然と学芸員を邪魔者扱いするような大臣の発言がありましたが、まさに今の内閣と、観光振興政策の本質を表していると思います。
私は県議会で、厳しい警告を発するこれらの山岳関係者などの「意見書」を紹介し、推進会議で提案されたロープーウェイ建設などには反対してきました。昨年9月議会の予算特別委員会では「関係者の意見をもっときくべき」と主張し、今年3月の経営企画委員会でも関係者の合意のないまま調査費が計上されようとしていることについて質しました。新年度予算案に計上されたロープーウェイの調査費と、早期開業・通年営業のための調査費には反対し、本会議討論でその内容を告発もしてきたところです。しかし、残念ながら、今この問題で反対・慎重な立場から質問してきたのも、関連予算に反対したのも私だけでした。他の議員は、石井知事の手前はっきり反対することができず、私と知事などのやり取りの様子を見ている議員もいるのだと思います。
さて、昨日開催された「第3回立山黒部国際ブランド化推進会議」では、新たなロープーウェイの建設ルート案が示されたとのことでした。しかし、環境省の担当者は、その推進会議の場で「国立公園の特別保護地区であり、建設は無理」「もう一本のルート案も現在のケーブルカーより自然環境への賦課が小さいことが示されなければ無理」と明確に述べたと言います。それでも石井知事は、昨年8月にスイスに行ってツェルマットのロープーウェイを見て感動したと言って、ロープーウェイがどうしても作りたい様子です。自然はいちど壊されたら、もう元には戻りません。世論と運動を広げなければと思います。ぜひ、ご協力をお願いいたします。